北海道大学コワーキング研究コミュニティによる2016年度の調査結果を読んで
北海道大学コワーキング研究コミュニティによるコワーキングスペースへのアンケート調査に協力しました。2014年に引き続き、二回目になります。このたび報告書を送っていただきました!なので前回の内容も振り返りつつ印象的だった部分について書いてみます。
なお、内容は北海道大学の学術成果コレクションにもPDFで公開されています。コワーキングスペースを開設したいと夢見ている方は、まずこの論文を読んで現状というものを把握すべきだと思いますね。
ちなみに前回2014年の調査結果を読んでの感想ブログがこちらです。
sendaiworkspace.hatenablog.com
この冊子は前半が調査結果をまとめたもの、後半が相関を分析したものになっています。
今回も売上・利益と連携に着目して読んでました。
1ヶ月の売上が100万円以上のスペースは23である(16.8%)。一方で、73スペース(53.3%)は20万円以下、9スペース(6.6%)は売上なしである。
(p.130より)
売上の質問に回答したのは137スペースなのですが、このへんの割合は前回の調査とそう変わってないようです。
それよりショックなのは1ヶ月の利益の調査結果。こちらはN=126ですが、
108スペース(85.7%)は20万円以下、49スペース(38.9%)は利益なしである。
(p.131)
約40%のスペースがノラヤと同じ利益がゼロなんて、勇気が湧いてきますね!……いやいや。この40%の中でノラヤのように「本当は利益出したいんだよ!」と思っているスペースはどのぐらいあるのでしょう。「利益はなくていいんですよ〜慈善事業のつもりです、他で収益はありますから〜」と、菩薩のような笑みを浮かべているかもしれませんね。
話を戻しまして、さらにグラフを見ますと、利益0〜10万が49スペース、0〜10万以下が48スペース。97スペース(77.0%)が利益10万以下なんですよ!あんまりです!
ちなみに利益、中央値が3万です。
気をとりなおして、相関分析の方をみていきます。
分析のまとめはp.145に書いています。
相関は相関でしかないので、あまり信じちゃうのもあれですけど、
・近隣スペースをライバルとみなすほど、利用者が増える
・近隣や遠隔のスペースといった他の主体との連携と、利用者数には相関がみられない
このあたりは、そりゃそうだなわと思います。
この調査では「連携」という言葉の定義……つまり連携ってなにをすることなのか?がはっきりしていないため、解釈によってぶれてくるように思います。連携の片思いもありうる。
それから、
・起業家・経営者、法人利用者の割合が高まると、利益が増す
という点もそりゃそうだなと思うし、「起業家はいません!」と宣伝しているノラヤが利益ないのも、しょうがないなと思えてくるわけです。
が、そもそもこの利益も先に述べたように7割以上が零細で吹けば飛ぶようなレベルなんで、おそらく一人二人の違いで大幅に利益も変わってしまうんじゃないかと思います。
改めて、成功しているコワーキングスペースってほんの僅かなんだなと思いました。成功しているところはSNSでもすごく目立つので、コワーキングスペースの代表みたいに思えるけど、そんなことはない。コワーキングスペースを作ればあのように人が溢れかえりイベントを盛んに行い、賑わうものだと錯覚してしまうかもしれない。でも、実際は、77%が利益10万以下。コワーキングスペースの代表は、むしろノラヤみたいな零細スペースなんですね。
北海道大学のグループの方々には引き続き研究を続けていただきたいと思いましたし、研究費がもっと取れてもっと掘り下げた研究もしていただけたらありがたいなと思いました。