仙台のコワーキングスペース「ノラヤ」戦う管理人

仙台市青葉区、地下鉄北四番丁から徒歩8分のコワーキングスペース「ノラヤ」を運営している人の赤裸々なブログ。

比嘉さんと、ノラヤサイエンスバーのこと

ノラヤの常連の方が9/3に亡くなりました。天文コミュニケータの比嘉義裕さん。突然のことでした。ノラヤのことを気に入ってくれて、またノラヤの幅を大きく広げてくれた方です。本当に本当に、残念でなりません。
ただ悲しくて個人的に思い入れを語りたいだけでなく、コワーキングスペースで起きた素晴らしい「化学反応」のひとつの例として、コワーキング関係者の目にも留まるよう、こちらに比嘉さんとの思い出を書きます。


比嘉さんとの出会いは、昨年の夏ごろでした。
私は、ノラヤで、サイエンスイベントやりたいなってことを、時々twitterで言ってたんです。
大学でやってるサイエンスカフェのような講義みたいなのではなく、もっと少人数で講師との距離が近い状態で、みんなで飲んだり食べたりしながらサイエンスの話をするようなイベントがあったらいいのに。なんてことを、ぶつぶつ言ってました。
それを拾ってくれたのがサイエンスカフェポータル(@cafesci_portal)という、サイエンスカフェ関係の話題を提供しているアカウントの方。サイエンスカフェ「星カフェみやぎ座」を主催していた比嘉さんに「コワーキングスペースでもやってみては」と紹介してくれたのです。サイエンスカフェポータルさんが繋いでくださったお陰で、比嘉さんはノラヤに興味を持ってくれました。

夏至Jelly!がちょうどあったので、来てくださいました。麻婆焼きそばが話題になりはじめた頃で、コンビニで買って来た麻婆焼きそばを食べながら緊張気味に話したのを覚えています。
皆既日食の映像を持っていきますね!あと太陽を観察しましょう!」と、すごく勢いこんでいらっしゃったので、私はよりによって、夏至Jellyという、日の出からビールを飲もうというもっともダメ人間的なイベントの日にそんな真面目な方が来て、がっかりされるんではないかと思って急遽天文に詳しい友人も呼びつけました。でも、そんな懸念は杞憂であったと思える程、比嘉さんはフレンドリーで好奇心旺盛な方でした。見せてくれた映像と日食にまつわるお話は、プチサイエンスカフェ的な内容でとても楽しかったです。
コワーキングマガジンの取材を受けたときもこの時のエピソードを話して、比嘉さんのことは文章になりましたし、写真にも載ってます。

ぜひ、こういう科学のお話を聞きながら楽しく宴会するイベント、やりましょう!と約束してくださって、数ヶ月後。
「月を見ながら、月にまつわる話をしましょう」と、提案していただき、ついに初のサイエンスバーが実現。題して「お月見Jelly!」。イベントは募集開始したとたんすぐに満員になってしまいました。
望遠鏡での月の観察と宴会と比嘉さんのレクチャーと両立するのか?と私も不安でいっぱいでしたが、比嘉さんがいいかんじに進行してくれてとても充実したイベントになりました。

サイエンスバー二回目は比嘉さんの得意分野、流れ星の話をしていただきました。「流れ星Jelly!」もたいへん好評で、楽しい時間を過ごしました。やがて比嘉さんの他にもサイエンスバーの講師に立候補してくれる方々が現れ、生物の話や数学の話など広がりをみせ、昼に開催したサイエンスカフェを会わせるとこれまで5回開催することができました。すべて、比嘉さんが最初に道筋をつけてくれたお陰です。実績ができたからこそ、こんなイベントやってるよって拡散することができました。ノラヤを特徴づけるイベントシリーズの一つとして。

比嘉さんは、いろんなイベントに来てくれました。参加できない時は、いつも、「残念!予定が入っていて……」とコメントしてくれて、なんだか申し訳なかったです。サイエンスバーには参加者としても来られてましたし、「野の獣を喰らう ―狩猟という生活について―」にも、「たこ焼きJelly!」にもいらしてました。
焚火Jellyをやったときは、比嘉さんは、マシュマロ焼きとビー玉焼きで子どもたちの心をつかみました。ビー玉焼きは私も初めてやってみて、とても綺麗でびっくりしました。遊び心溢れた人なんだなぁと思いました。もうすぐ芋煮のシーズンだから、またビー玉焼きができると楽しみにしていました。


比嘉さんに最後にお会いしたのはちょうど一週間前。
5回目となる、「サイエンスバーvol.4 いきもの雑学講座第1.5回 プラナリアのひみつ」に参加者として来てくださいました。
いつものようにお酒をお土産に持参してくださって、講師の有田さんにも積極的に質問して、そして「さあ、ギッタギッタにしてやるぞ」と笑いながら、プラナリア切断と観察をしました。

数日後には、次のサイエンスバーの提案のメッセージをくださいました。
「地球以外にもたぶん存在する生命!」というテーマで、10/23にやりましょうということになり、「ちと大風呂敷を広げてしまいどうするか思案中!がんばります」と語っていました。来月のことなのにもうそんなに考えているなんてありがたいなぁと思いました。それが亡くなる前日のことでした。ノラヤの壁掛けカレンダーには10/23にサイエンスカフェと書き込んだままです。消すのがつらいです。(誰かやりませんかね?)

ノラヤの中にも比嘉さんの思い出がいっぱいです。比嘉さんがお月見Jelly!の時に配っていた写真もあるし。今度焚火の時にビー玉焼きするためのビー玉も、あるんですよ。比嘉さんが持って来たウィスキーも少し残っています。今度のたこ焼きの時に飲み尽くす予定です。
比嘉さんはできたばかりの、ノラヤのフライヤーの中にもいます。載せちゃいましたと報告するのが楽しみだったのに。

比嘉さんはノラヤのことをとても気に入ってくれてました。「ノラヤは本当に面白い。他では絶対に出会えない人たちに会える」と、イベントのたび繰り返し言っていました。
「Jellyっていうのはね…」と、私のかわりに他の人にコワーキング用語について解説したりもしてくれました。
ノラヤに来店した回数は常連の中では少ないけれど、いつもtwitterFacebookでコメントして議論に参加してくださいました。こちらの経営状況があまりに悲惨なのと、管理人が一人でなんでも背負い込みすぎなのを気にかけてくれてました。
「ノラヤらしさから、ぶれちゃだめよ〜宗形さん」と、他のコワーキングスペースを私が羨ましがってグレ気味になっていたときに、言ってくれました。
そういえば、回数券買ってたのに2枚くらいしか使ってないじゃないですか、比嘉さん。


比嘉さんが亡くなられた知らせを聞いて、ただただ呆然とした昨日から一日経ち、確実に思うことは、比嘉さんがきっかけでノラヤの中で育ったサイエンスバーを今後も続けていきたいということです。なんていうときっと比嘉さんは「まぁ無理しないでね」と笑いそうですが。コワーキングスペースの中でサイエンスイベントというのは、まだまだ全国にも少ないみたいですし、できればその輪を広げていきたい。
そしてこれまでももちろんそう思っていましたが、ノラヤが無くならないよう、考えなければと思いました。ノラヤは面白いよ。そう言ってくれる人が、まだまだたくさんいるのに、出会っていない気がする。比嘉さんの思い出とともに、今後もがんばっていきたいと思います。