仙台のコワーキングスペース「ノラヤ」戦う管理人

仙台市青葉区、地下鉄北四番丁から徒歩8分のコワーキングスペース「ノラヤ」を運営している人の赤裸々なブログ。

北海道大学コワーキング研究コミュニティ2014年度活動報告書を送っていただきました


昨年、北海道大学コワーキング研究コミュニティによるコワーキングスペースへのアンケート調査に協力したのですが、このたびその調査・研究結果の一部を掲載した報告書を送っていただきました!
ありがとうございます!
(なお、内容は北海道大学の学術成果コレクションにもPDFで公開されています。)

調査結果の概要と、いくつかの要素の相関を調べた分析を拝見させていただきました。いくつか気になった点について感想と考察をしたいと思います。統計は卒論にも使ったはずなのですがかなり忘れているので、まとはずれだったらごめんなさい。

まずは売上。やっぱ一番気になります。

回答したスペースのうち約88%は一ヶ月の売上が100万円以下、約52%は20万円以下、約6%は売上なしである。
(活動報告書p.103)

回答数が101なので、6%ということは6スペースが売上なしということになります。しかしグラフと表を見ると、売上の値が0なのが度数11で最頻値……これは1万未満も含んでいるんでしょうか?……「利用者が全然来ないから0」ではなくて「もともと無料のスペースである」のも混じっているのかもしれません。利用者数の調査結果では0が最頻値ではないので。
ちなみに売上の平均・標準偏差なども掲載されていたので、ノラヤの売上の偏差値を計算してみようかなとも思ったのですが、あんまり意味なさそうなのでやめました。平均値が50.73、中央値が20(単位は万)なので、低いほうが多いんでしょうね。思ったよりみなさん売上低いんだなと安心しました。(安心しちゃだめじゃん)

興味深いのが「連携」と「競合」に言及されているp.94から「運営方針」の部分。
私が最近、連携ってなんのことを言うのだろう、どうしたらいいんだろう、連携しなきゃいけないんだろうか……と考えているのもあって、気になりました。

「◯◯と連携している」かどうか、という一連の質問がありました。◯◯には近隣スペース、遠隔スペース、地域、他企業、行政、NPO、公的機関がそれぞれ入ります。
回答の分析によると、連携と売上・利用者数の相関はあまり強くない。(そしてコワーキングスペースどうしの連携より、企業や公的機関との連携のほうが多少強い。)これは連携しても売上に繋がらない、というわけではなく、売上が高いから連携の必要がないということじゃないかと思いました。
「連携」と対立する「ライバル視」についての調査では、「近隣コワーキングスペースはライバルである」に、否定的な回答をしたスペースが圧倒的に多く、(190のうち144)、これは「コワーキングスペースにライバルはいない」という佐谷さんが繰り返し主張するメッセージが強力に生きているんだろうし、スペースごとに特色がかなり違うので住み分けができるというのもあると思います。ただ、この結果も第一世代より第二、第三世代のスペースが増えていくことにより*1、だんだん変わっていくような気がします。

そしてスペースの現状に運営者は満足しているか?という調査については満足していない運営者が6割。(p.104) でも面白いことに、「スペース単体での採算性を重視」の質問への回答から、運営者はそれほど採算性を重視していなくて、むしろコミュニティ形成を重視している傾向がみられるのに、(p.96)、スペース単体での利益が出ていないことを課題として捉えていると思われる、のです。(p.106)
この矛盾する結果は、私が思うに、現在コワーキングスペースで、形成されているコミュニティはすごくいいものだと思っている。でも、売上が上げられなければ閉鎖を余儀なくされる(たとえ他の事業で利益がでているとしても、コミュニティ形成だけのモチベーションだけではリソースをつぎ込むのも限界がある)から、なんとかしなきゃいけないなと思っている…みんなジレンマを抱えてる。そういうことなのかなと思いました。


コワーキングスペースの実態や、他のスペースの運営者が何を考えているのか、知りたいけど聞きづらい点がこうした研究で明らかになるのは、ありがたいですね。
北海道大学のこちらのコワーキングコミュニティだけでなく、山形の東北芸術工科大学でもコワーキングについて研究しています。また、京都工芸繊維大学では、コワーキングが国内ではまだ盛り上がってない2011年からコワーキングを研究テーマにしています。
今後はさらにつっこんだ研究がなされることを期待しています。
たとえば、いま地方都市では、コワーキングという文化が入ったとたんスペースが一気に5,6個もできるような事態もみられます。仙台も一気にではありませんが、人口比では激戦区になってしまいました。東京と地方都市のコワーキングスペース運営戦略も捉えられ方もまったく異なるように思います。住民の気質も影響するでしょう。
数年間継続して観察して、コワーキング文化が入っていってコワーキングスペースができて、なにがどう変わるのか、生き残るスペースの条件はなにか…なんていうのが明らかになれば、とても興味深いと思います。

そういえばこのブログも「仙台にワーキングスペースを作ろう研究会」(ただし一人プロジェクト)なんでした。研究、したいなぁ。