コワーキングスペース運営者が知っとくべき知識(日本での広がり編)
※ 前回のコワーキングスペース運営者が知っとくべき知識(基本編)の続きです。
日本でのコワーキング関連の動き
さて、海外でコワーキングというものが始まり、コワーキングスペースが開設され、Jellyも開催され……
日本でもその動きは知られるようになりました。
日本で働く人達にも…特にフリーランス(個人事業主)のみなさんが、コワーキング(という名前は知らなくとも)の必要性をひしひしと感じていたようです。
日本で初めてのコワーキングスペース「カフーツ」が2010年5月にオープン
日本初のコワーキングスペースは兵庫県神戸市に、オープンしました。「カフーツ」です。
2009年12月21日、こちらのブログに、伊藤富雄さんがコワーキングスペースを作る宣言をしています。
ボクは現在、フリーランスのウェブワーカーが、情報共有と協業仲間を持つのをサポートすることを目的に「カフーツ(Cahootz)」というネットワークを起ち上げようとしている。 ちなみに、カフーツとは「ぐる(仲間)」という意味。(もちろん、The Band の4枚目のアルバム『Cahoots』にもかけている。ま、判る人にしか判らないことだけど。)
その活動を続ける中で、今、世界に「Coworking」という働き方が広まりつつあることに気づいた。
カフーツ~ノマドからCoworkingという働き方へ。 | ネットビジネスwithソーシャルウェブ~伊藤富雄@ナウ!
SNSを中心としてネットワーク「カフーツ」を作ろうとしていましたが、そのとき知った「コワーキング」。以前から勉強会で人と空間を共有する重要性を感じていた伊藤さんは魅力を感じ、コワーキングスペースも作ることにしました。
2010年5月、コワーキングスペース「カフーツ」がオープンします。
2010年6月、コワーキングの情報を発信するブログ「コワーキングJP」始まる
そんな伊藤さんのブログを見て刺激を受け、コワーキングにのめり込んだのが、松田顕さん。2010年6月1日から、コワーキングの情報を発信するブログ、コワーキングJPを始めます。
コワーキングをどうやって知りましたか?
カフーツの伊藤さんが2009年の12月にブログに書いていたのを見て、はじめて知りました。それまでも日本語でcoworkingやJellyに関しての記事は何度か他の人が書いていたことはあったようですが、日本でコワーキングスペースを運営すると宣言した初めての人だったので興奮しそれ以来ずっとCoworkingにのめり込んでいます。なぜコワーキングしようと思ったのですか
Coworker’s Interviews #001 Dozens株式会社松田さん | PAX Coworking (パックス・コワーキング)
仕事上の繋がりしかない状態でそれ以外の人とつながることもあまりありませんでした。今後ずっと一人でやっていくのにネットワークが必要だなと思っていた時に伊藤さんのブログをみて自分の思っていたのがコレだと感じたのがきっかけでした。コワーキングに関しても自分に何かできないかなと思い、2010年6月にコワーキングJPというコワーキング情報を集めたブログをはじめました。
松田さんはFacebookグループのコワーキングJP管理者でもあります。また、Wikipediaの日本語の「コワーキング」の項目も作ったのだそうです!
日本では二番目、東京初のコワーキングスペース「PAX Coworking」が2010年8月にオープン
そんな「コワーキングJP」で、東京で初めてのコワーキングスペースオープンのニュースが興奮気味に伝えられます。
2010年8月1日、東京都世田谷区経堂に「PAX Coworking」が誕生します。
なお、PAX Coworkingはプレスリリース時は「PieceOfPeace Coworking'S'peace(PCCS)」という名前だったんですね。
PAX Coworkingのオーナー佐谷恭さんは、交流するしかけを持つパクチー専門料理店を経営しています。相席推奨のお店で過ごすお客様はとても楽しそうで、お客様どうし仲良くなり、ビジネスに発展するケースまで生まれました。それを見て、同じようにたくさんの人が交流して笑顔で働く場所を作りたいと思い、コワーキングスペースを開設したそうです。
PAX Coworkingでは日本で初めてのJellyも開催された
PAX Coworkingでは日本初のJellyも開催されました。オープンして約一ヶ月後、8月29日のことです。
http://beemanet.com/kyoblog/2010/08/jelly.html
以後、「PAX Jelly」として、定期的にJellyを開催しています。現在まで129回開催されました。
Jellyがきっかけで新たなコワーキングスペースが生まれていく
そんなPAX Jellyに参加された方が、自分でもコワーキングスペースを開くように。
2010年末に開催されたJellyは、やがて東京で二番目にコワーキングスペース「下北沢オープンソースカフェ」(2011年3月開設)を運営することになる河村奨さんがコワーキングを知るきっかけにもなりました。
つながりの仕事術~「コワーキング」を始めようp.49
日本で3番目のコワーキングスペース、そして次々と……
国内コワーキング先駆者たちの動きは、多くの人に影響を与えて行きます。
共働きで子育てをしながら、豊かな生活を実現するための仕組みを作ろうと夫婦で模索した結果、家業のビル管理にコワーキングの仕組みを取り入れたのが「JUSO Coworking」である。関西圏の交通の要所である十三という立地で、新大阪駅からも近い特徴を活かし、関西県外からの集客にも期待している。
つながりの仕事術~「コワーキング」を始めようp.150〜151
オーナー夫婦の深沢幸治郎・周代さんはそれぞれ、ウェブ制作とビルの管理事務が本業。2009年に夫妻が子どもを授かると同時に幸治郎さんがウェブ制作者として独立し、ビル経営・独立事業の未来形を模索し始めた。2010年秋、ツイッターでパックス・コワーキング設立のニュースを知り、「新しいオフィスの携帯」に興味を持ち、見学に訪れた。その3ヶ月後の12月1日に管理するビルの一角を改装し、JUSO Coworkingを開いた。
日本で3番目のコワーキングスペースは2010年12月1日に大阪・十三に生まれました。
そして2011年は次々にコワーキングスペースがオープンしていきます。
2011年からコワーキングをテーマにしたイベントが開催されるようになった
コワーキングへの興味・関心が高い人たちや、コワーキングスペースのオーナー、コワーキングスペースを開きたい人が集まり、フォーラムやカンファレンスが開催されるようになりました。
コワーキング・フォーラム関西2011
日本で初めてのコワーキングをテーマにしたイベントは、コワーキングスペース発祥の地である神戸で、2011年12月11日に開催された「コワーキング・フォーラム関西2011」。(公式サイトは現在ありません)
当日は100人強の参加者が関西だけでなく東京をはじめ全国から集まりました。一つの会場でJellyのスペースとプレゼンするスペースが共有され、とてもコワーキング的な空間だったようです。
カフーツの伊藤さんのこちらのブログから熱気が伝わってきます。
Coworking Conference Tokyo 2012
東京では、2012年6月16日「Coworking Conference Tokyo 2012」が品川のKOKUYOエコライブオフィスにて開催されました。参加スペースは15都道府県の37スペース!コワーキングスペースを運営している人、コワーキングスペースで仕事している人、コワーキングに興味がある人、コワーキングスペースを開きたい人など500人以上が参加しました。
2ヶ所の会場で複数のセッションが行われ、コワーキングスペースを運営したい人と運営者が語るランチセッション、女性限定の女性×コワーキングライトニングトークス大会、参加スペースが一同に会したJellyなど、大変な盛り上がりでした。
Coworking Conference Tokyo 2012(公式サイトは現在ありません)
日本で初めてのコワーキングについての本が出版される
すでに度々引用していますが、日本のコワーキングのバイブル、つながりの仕事術~「コワーキング」を始めよう (洋泉社新書y)が2012年5月25日に発売されました。
つながりの仕事術~「コワーキング」を始めよう (洋泉社新書y)
- 作者: 佐谷恭,藤木穣,中谷健一
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2012/05/10
- メディア: 新書
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日本のコワーキング黎明期にどんな人達がどんな思いでスペースを作ったか、そこからどんなビジネスが生まれていったか、わかります。
コワーキングビザjpが2012年5月にスタート
Coworking Conference Tokyo 2012の一ヶ月ほど前の5月16日、オープンソースカフェにてコワーキングスペースオーナーが集まって記者会見が開かれました。コワーキングビザjpという新しい仕組みが、2012年5月17日からスタートしました。記者会見の模様はこちらから見ることができます。
これは、コワーキングビザjpに加入しているスペースの月額会員は、別の加入スペースを無料または割引でドロップイン利用できるというものです。
以下、山川ジャッキーさん(元ZEN Coworking運営)がPAX Coworkingのブログに書いたものより引用。
記者会見の中でも言っていますが、今のコワーキング界はひとつひとつのスペースが少しずつ閉じ始めていると感じています。
一つの安住の地を見つけると、普通別の場所にわざわざ行かなくなるのは人の摂理なんでしょうね。でもコワーキングの楽しさというのは、うちわの楽しみと言うよりも、新しい人との衝撃的な出会いの方だと思いませんか?
だとすると極論ですが、閉じ始めているスペース=コワーキングがあんまり楽しくなくなってゆくスペースということにもなりかねません。もちろんわたしが今運営しているZEN Coworkingみたいな始まったばかりのところは、それどころではないといえばそのとおりなんですが(^^ゞ、いずれ大問題として浮上してくることは明らかなわけです。
そういう危機意識を持っている人は、運営をしている人たちだけではなく、コワーカーとして働いている人たちの中にも、これでいいんだろうか?的に感じている人もいないわけではないんですよね。
そういう問題点を解決するために、スペース同士の交流を促進し、より高い流動性と多様性をみんなで確保しようと考えて作られたのが、コワーキングビザjpなわけです。
コワーキングビザjp始まりました! | PAX Coworking (パックス・コワーキング)
コワーキングビザjpの利用のしかたはコワーキングビザjpのFacebookグループの説明に書いてありますのでそちらをご覧ください。
2012年8月、コワーキング協同組合ができた
2012年8月1日に、コワーキング事業協同組合というものができました。(兵庫県で認可され、のちに経済産業省へ所管が移ります)
コワーキングスペースオーナーや、コワーカーがお互い助けあい、もっとコワーキングが普及するように、もっとコワーカーがより良い環境で仕事できるようにするための協同組合です。
このたび 8 月 1 日付けで設立されたコワーキング事業協同組合は、現代人の新しい働き方であるコワーキングを広く社会に普及させ、コワーキングスペースを拠点に活動する フリーランス(個人事業者)や小規模法人のビジネスチャンスの拡大と、教育研修機会の創出、並びに福利厚生の向上等を目的とした事業を開始します。
全国初!コワーキング事業協同組合が設立、活動を開始 〜現代人の新しい働き方コワーキングの普及とコワーカーのワークスタイルをサポート〜
…というわけで。
2010年から2012年は、ざっくりまとめると、
- 国内初のコワーキングスペースができた
- 国内でコワーキングの情報が発信されるようになった
- 次々と影響しあってコワーキングスペースが増えていった
- 今のコワーキングについてまとめて知ることができるイベント・本ができた
- 全国のコワーカーがつながる仕組みができた
- 全国のコワーカーがお互い助けあう協同組合ができた
点→放射状の拡がり→まとめ(イベント、本)→面への拡がり、ってかんじでしょうか。
次回は行政の動き・地方での取り組み編の予定です。